唯一、自分からアプローチした恋

以前、こんな記事を書いた。

『モテ期ですら女性との距離が縮まらない』


いま考えると、自分のことながら

このモテっぷりはとても羨ましい。


その記事で言及した、モテたというより、

自分からアプローチしたので除外した..

という恋バナが1つ残っている。



今回はその話。


これもそのモテ期のできごと。



僕はよく扁桃腺炎を起こしていた。


いつも高熱は出すが、
一週間くらいで回復していた。


しかし、このときばかりは一週間すぎても、
回復の兆しがなかった。


そこで、かかりつけ医に紹介状を書いてもらい、

大きな病院に入院することになった。


僕にとって初めての入院だった。


6人部屋の病室。


若い女性ナースが2人、
交代で診に来てくれていた。


そのうちの1人が、

それはもう、

めちゃくちゃに可愛かったのである。


しかも、小柄な子で僕好み。


まさに天使のようで、


僕は一瞬で恋に落ちた。



1週間ほどで熱も下がり回復したが、

まだ退院したくなかったので、


「あと1日、様子見た方が良さそう」


と言って、退院を引き延ばした。


その翌日、おとなしく退院したが、


彼女のことが忘れられない。


諦められなかった。


ここまでの気持ちになったことはない。



「彼女と付き合いたい」


僕は本気だった。

そこで作戦を考えた。



彼女の名前は知っていたが、
もちろん連絡先は知らない。


だから、病院に直接乗り込むしかない。


でも、僕にはそんな勇気はなかった。



そこで、悩んだ末、


友達に協力してもらうことにした。



作戦はこう。



「ナースステーションへ行って、

 〇〇さんを呼び出して、

 赤いバラ1輪と手紙を渡して」



その友達はバイトも一緒だったので、

頼みやすかったし、

そういうことが好きだったようで、

快く引き受けてくれた。



そして当日。


彼女がいるナースステーションが何階だったか、
覚えていないが、

僕は階段の途中で待っていた。



友達がナースステーションに入ると、


「キャーー!」と、


ナースたちの声が響いた。



その友達がナースに告白するように
勘違いされたっぽい。


あとで友達に「どうだった?」と聞いたら、


「すっげー、可愛かった」と言っていた。


僕は手紙にバイト先の電話番号と
自分が出勤している曜日と時間を書いた。

あと僕の写ってる写真を1枚入れた。



「もしよかったら電話ください」



この時代はまだ携帯がないので、
店にかけてもらうのが最善策。



僕は期待して電話を待っていた。



この状況だから、社員も含めみんな
事情を知っていた。



そしてついに…



彼女から電話がかかって来た。



僕は緊張して、心臓バクバクで、



バックヤードへ行き、保留中の受話器をとった。



何を話したかよく覚えてないが、


とにかく、彼女の自宅の電話番号を聞き出し、

後日、デートの約束をすることができた。



僕にしては、凄いことをやってのけたと思う。



人生初のデート。

デートと言っても、最初だから夕食に誘った。

無難にイタリアンレストランを選んだ。


情けないが、僕は車を持っていなかったので、
彼女の車で行くことになった。



それでも迎えに来てもらうわけにはいかないので、
彼女の勤める病院に集合とした。


病院まで自転車でも行けたが、

バイトの先輩が彼女を見てみたいらしく、

「俺、送ってくよ」と言ってくれた。



この先輩はなかなかカッコよく、
綺麗な彼女もいた。



そしてデート当日。


僕は着ていく服を悩んだが、
微妙なセーターを選んでしまった。


病院までバイトの先輩に送ってもらい、


いよいよ彼女と再会。



僕は彼女の車の助手席に乗り、


二人はイタリアンのお店へと向かった・・のだが、




いきなり彼女の変な行動が気になってしまった。



彼女は運転中、左膝を立てて、
左足をシートの上にのせていた。


(え!?そんな運転の仕方ある?)



なんか、車内装とかも含め、
ヤンキーっぽいというか、



もっと清楚なイメージだった彼女の


ギャップを目の当たりにして、


僕はかなり引いてしまった。



それが影響してか、ほぼ無言状態に。




そして、イタリアンレストランに到着。

席に案内された。




オーダーがなかなか来ない。

いくら待っても来ない。

ぜんぜん混んでないのに。

というか、店員の姿も見えない。

「なかなか来ないね」



僕はとうとう痺れを切らして、
店員を呼びに、席を立った。


そのとき聞こえてしまった。

「呼びに行っちゃうかなぁ?」

・・・・

二人はそれぞれパスタをオーダーした。


会話は弾まず・・・というより、

終始、無言だった気がする。

食事が済んだあと彼女が言った。


「タバコ吸っていい?」


きっとイライラしていたんだと思う。


「あ、どうぞ」



確かに僕が悪い。


「無口」って、罪かも。


僕が誘ったんだし、ちゃんとリードすべき。



ただ黙ってるのは努力が足りない。



食事は僕がおごると言ったら、


今日一(今日初?)の笑顔で嬉しそうに笑った。



帰り道、


「夜の運転は、自転車怖いね」


と言ったら、妙に反応よく共感してくれた。


(ん?こんなのでいいのか..)


会話は難しく考えると、思考停止になる。



最初だから聞きたいことも山ほどあるはず。



でもなぜか僕はありふれた質問をするのが、

つまらないと思われるんじゃないかと、

いらぬ心配をしていた。


その考え方は今でも抜けない。



「また連絡するね」


「うん、はーい」


その日は、こんな風に軽い感じで別れた。



別に付き合わないにしても、

もっと楽しくデートできたはず。



若さゆえ、というのはある。



経験がないとこうなってしまうんだろう。



僕は、膝立運転もそうだが、
それ以上に、喫煙が気になっていた。



その後、彼女との関係をどうしようかと思い悩んだ。


でも僕は、彼女のことがまだ好きだった。



そこで、また手紙を送ることにした。



喫煙について、言われなくても分かっているような

説教じみたことを書き綴り、


「こんな俺でもまた会ってもらえるなら手紙ください」と。

・・・・

まあ、こう書いた時点で

僕もどっちでも良かったのかも知れない。



もちろん、彼女から手紙は来なかった。




これが唯一、僕が自らアプローチした恋の全容です。


失敗したけど、チャレンジした経験だから、


「よくやった」ということでいいのかな。