「ジャンと久美子の関係でいいよね」
付き合い始めのころ、冗談ぽくこう話していた。
若い人はピンと来ないかもしれないけど、
つまり事実婚の関係。
実際、毎日のように一緒にいたし、
生活はほとんど家族同然。
だから僕は、結婚という形にそれほどこだわりがなかった。
一緒にいられればそれで十分という考え。
だけど彼女の本心は違っていた。
何としても結婚したかったはず。
当たり前だが、愛する人と正式な家族になりたい。
そう思わない方が不自然。
経済的にも母子家庭は大変。法律婚の安心感に勝るものはない。
それでも彼女は、結婚を強く迫ることはなかった。
僕の両親が反対しているのが分かっていたので。
「どうせ結婚できないんでしょ?」くらいな感じで、
時たま言ってくる程度。
将来に不安を抱えながら、我慢していたと思う。
そして父の葬儀の日。
彼女は父に会いに来て、彼女なりの義理を通した。
そして、僕の家族の中に少しでも入りたいと思っていたはず。
でも僕は、家族に会わせないまま彼女を帰してしまった。
彼女がずっと抱いていた希望。わずかに残っていた希望。
それが音を立てて崩れた日になってしまった。
彼女は言った。
「あなたのお父さんが亡くなった時の屈辱は、一生忘れないからね」
彼女が失ったのは、その日の感情だけではない。
もっと長い時間をかけて抱いていた願い。
いつか結婚できるかもしれない。
いつか家族として認めてもらえるかもしれない。
そんな切ない希望だった。
そう思うと、胸が痛む。
僕はずっと、彼女の痛みの大きさを理解できていなかった。
あの日の屈辱は、一生忘れないからね
- 2026年6月12日
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2026年5月28日彼女への想い
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