彼女はわりとイライラしやすいタイプだった。
僕は、なるべくそのスイッチを押さないように
気をつけてはいた。
でもまだ若いうちは、
思ったことを考えず言ってしまい、
結局、地雷を踏んでいた。
旅先での喧嘩は、
だいたいパターンが決まっていて、
ショッピングをしているときに起きる。
こんな感じ。
「あっ、ここ見たい。ごはん食べたら来ようね」
「うん、いいよ」
・・・食事後、
「さっきの店、行こう」
「あーー、なんかあんまよくなさそう、
やめとかない?」
「(怒!!!!!!)」「・・・(無言)・・・」
わかってます。
100パー、僕が悪い。
でも、これを僕は3回やっている。
軽井沢とバリとハワイで。
特に、バリのときは大変だった。
彼女が怒ってどこかに消えてしまい、
僕は、町中を探し回った。
すごく暑かった。
店へしらみつぶしに入った。
でも、ぜんぜん見つからない。
だんだん日が陰ってきて、
探すのも難しくなってきた。
そして真っ暗になったので、
探すのは諦めて、部屋に帰ってくるのを
待つことにした。
娘は眠くなってしまった。
「ママ、まだ~?」
「ごめんね。寝てていいよ」
・・・・
彼女は、なかなか帰って来ない。
海外で同行者の行方が
分からなくなるのって、けっこう不安。
危険な場合もあるし。
でも、彼女の場合、少し事情が違う。
帰国子女なので英語はそこそこできた。
今回のバリ島についても、彼女は昔、
隣りの「ロンボク島」という島に、
ホームステイしていたことがある。
バリはよく来ていたそうなので、
少しは慣れているのかも。
・・・・
僕は1つだけ、
探し忘れている場所があることに気付いた。
「そうだ!ビーチだ」
彼女は海が好き。
オーシャンフロントのホテルだったので、
もしかすると目の前にいるんじゃないか?
僕はすぐ行ってみた。
「ビンゴ!」
波打ち際で座って、缶ビールを飲んでいた。
「やっと、見つけた、ここにいたのか」
「ず~~~っと探してたんだよ」
「んあー?」
「今日はごめんね、でも無事でよかった」
「部屋帰ろ、(娘)寝ちゃったよ」
「本当にごめんね」
「別にいんさ」
貴重な時間を費やしてしまったが、
何より、無事に見つかってよかった。
こんな感じで、
彼女の希望をむげにした
ひとりよがりな言動で彼女を怒らせた。
これを3回やって、ようやく僕は理解した。