一時期、彼女と蕎麦にハマった。
彼女の叔父さんが、
趣味で蕎麦打ちをしていたので、
蕎麦の蘊蓄をいろいろ教えてもらった。
叔父さんが食べ歩いてつくった
名店リストがある。
それを見て、
二人で蕎麦屋めぐりをすることにした。
どの店も確かな味で、ハズレなし。
ある店にその名店リストが置いてあった。
「叔父さん、何者?」と思った。
それから、観光地で蕎麦打ち体験もした。
味はともかく、すごく楽しかったので、
いい思い出として残っている。
ところが翌日、
彼女が腸閉塞になってしまった。
蕎麦は消化が良くない。
彼女は以前、内臓の手術をしているので、
僕がもっと気に掛けるべきだった。
太打ちだから、余計悪かったのだろう。
それからは極力、蕎麦は控えることにした。
彼女はたまに、
「蕎麦たべた~い!」
と言うこともあった。
でも、彼女は腸閉塞の痛みを
よ~く知っているので、
「…やっぱ、やめとこ」
ちゃんと自重した。
どうしても食べたいと言うときは、
「よく噛んで食べるんだよ」
と念を押して、ゆっくり食べてもらった。
蕎麦屋めぐりはまだ道半ば。
でも、彼女はもういない。
蕎麦は大好きだが、
蕎麦屋めぐりは、
もうどうでもよくなってしまった。