季節は夏。両親を何度も説得して、ようやくその日を迎えました。
認める認めないはともかく、まず彼女に一度会ってほしい。
そう頼み続けて、ようやく両親がうなずいてくれました。
本当は娘も一緒に連れていきたかった。
でも母が強く拒否したので、彼女だけ来てもらうことになりました。
彼女を迎えに行くと、
黒地に花?の柄が入ったワンピースを着ていました。
地味な服をあまり持っていなかったので、わざわざ親友から借りた服です。
暗い感じもありましたが、精いっぱい準備したんだなと思いました。
手には菓子折りを持っていました。
こういうとき、彼女はきっちりしています。
僕が必要ないと思う場面でも、必ず手土産を準備する人でした。
そして、一緒に実家へ向かいました。
助手席に座る彼女の顔色は、あまり良くありませんでした。
二人は、緊張したまま玄関を開けました。
両親は優しく出迎えてくれたのでまずは一安心。
手土産を渡し、居間に通してもらい、ソファに座りました。
でも、会話は噛み合いませんでした。
途中から父がほぼ一人で話していました。
地域のこととか、どうでもいいような話。
彼女は愛想笑いをしながら聞いていました。
引きつり気味の顔で。
僕もうまくフォローできなかった。
彼女からもほとんど話題を振ることはありませんでした。
話が盛り上がらないまま、彼女は2階の僕の部屋へ来ました。
「あぁ〜、疲れた」
そう言ったきり、彼女は、しばらく無言でした。
間もなくして、何の手ごたえもないまま、彼女を家まで送りました。
帰ってくるなり、母はこう言いました。
「なんかあんまりいい感じがしない顔つきね。お母さんはイヤ。絶対反対だからね!」
父はいつも通り、はっきりとは言いません。
でも反対していることはわかりました。
僕はなぜか少しだけ楽観視していたので、
こうはっきり反対されると思いませんでした。
残念だけど、結果は失敗です。
別の日、弟にも会ってもらいました。
自宅近くの居酒屋。
この日は娘も一緒だったので、4人で食事をしました。
最初は楽しく飲んでいましたが、
まだ幼児だった娘が次第にぐずり始めました。
だんだん我慢できなくなった彼女は、
「バチン!」と娘のほっぺにビンタを一発。
ああ、やっちゃった・・・
弟はすごく大人なので、冷静になだめてくれて、
そのあともそれなりに楽しく食事できたと記憶しています。
でも後日、弟に電話で彼女の印象を聞いたところ、
「兄貴には、もっとふさわしい人がいると思う」
そう言いました。
結局、家族の誰も味方に付けることができませんでした。
何かが足りなかった。それだけは、はっきりしていました。
そして、その気遣い不足が、
もっとあとになって重大な失敗をひき起こすこととなります。