心の扉

  • 2026年10月12日
  • Story

バイト時代のモテ期を不意にしたあとの僕には、


長い氷河期が待っていた。



大学を卒業して最初に入った会社では、
女性社員は2人いたが、


恋愛対象になるような感じではなかった。




仕事が終わると、

上司から頻繁に夜の街へ誘われたが、


生真面目な僕は、だいたい断っていた。



普通は断れるような時代じゃなかったが、

僕には変な強さがあったようだ。



まあ、強さというよりは、

それだけ心を閉じていたということだと思う。



でも、タダでお酒が飲めて、
キャバクラとかも楽しめたはずなのだから、



いま考えるともったいない。

普通なら、みんな喜んで行くだろう。




上司は怖いし厳しかったが、

部下のことを思いやるいい上司だった。


飲みに誘うとなれば、部下に何をどう伝えようか、


いろいろ考えを巡らせてくれていたはず。


仕事の話だけじゃなく、

世の中のことや人間関係など。



そういう機会からことごとく逃げてしまった。




ある日、同期の知り合いの女の子と
一緒に遊ぶことになった。


3対3だった。



女の子の一人が僕に興味を持ってくれた様子。



だけど僕の方は何とも・・・。



しかし、3人の中でリーダー格の女の子は、


男なら誰でも見惚れてしまうほど

圧倒的にかわいい子だった。


愛嬌があって、小柄でスタイルも抜群。


(こぉーー~~~れは、手が出ないなぁ・・)


僕には高嶺の花だった。


それにしても、こんな子を呼べちゃう同期が
すごいと思った。



・・・・それだけ。



それだけだけど、


これを最後に
何年もず~っと無風状態が続くことになった。



出会いの機会を作らなかったこともあるが、



そもそも僕は、

人見知りだし、人付き合いが苦手。

いわゆるコミュ障。



今でもそんなに変わらない。



弟の家族が来ても、
甥っ子姪っ子になかなか話しかけられないし、



長年、一緒に仕事をしている同僚とも
腹を割った話ができない。



母親との会話ですら、
ハキハキと言葉が出てこない。




でも、30歳で出会った

シンママの彼女は違った。



あんなに心を許せる人はいない。


唯一無二だった。




僕は、人と話していてもすぐに疲れて
その場を離れたくなってしまうが、


彼女とはずっと話していられた。



僕と彼女は、趣味も性格も真反対と言える。



ただ、彼女いわく、

「笑いのツボが一緒」だったらしい。


確かに笑い合うことが多かった。



二人は仕事上のメモ交換から
仲良くなっていった。


コミュ量が多くなれば、

それが愛情に変わることもある。



彼女の「心の扉」はずっとOPENだったので、



会話が苦手な僕でも、
うまくコミュニケーションが取れた。



「あ、なんか俺、女性とうまく話せてる。」



確か、最初はこんな感情からスタートした気がする。



ずっとそばにいてもストレスを感じない。



自分が自然体だし、積極的ですらある。



そんな人は初めてだった。



彼女が、僕の「心の扉」も開いてくれたのだ。